日本ペイントホールディングスは3月8日、各事業会社のトップと業界各紙を交えたオンライン懇談会で原材料高騰に関する現時点での取り組みと今後の見通しについて言及した。内容は第2四半期(4月)からの増収増益基調を示した決算発表(2月14日発表)に沿ったものだが、2月下旬にロシアがウクライナに侵攻。「当該地域に事業拠点はなく、ただちに当社事業に影響を及ぼすものではない」(広報部)としつつ、「先行きの見通しを難しくしている」と当初計画を見直す可能性を示した。
価格改定は4月1日納入分からで、改定の幅は塗料全品が8~10%、シンナー類が10~12%のそれぞれ値上げとなる。中国の環境規制強化と旺盛な需要に伴い、チタン白、アクリル樹脂原料、エポキシ樹脂原料等の需給逼迫が続いており、アジアおよび海外市況が急騰。また、原油・ナフサ価格も高騰していて、その他塗料原料・原材料価格の上昇に加え、物流コストも上昇している。
同社では、こうした原材料価格上昇に伴う大幅なコストアップを、自助努力により吸収する範囲を超える事態になったとして、今回の値上げに踏み切った。
日本ペイント
塗料原材料価格の高騰が止まらない。コロナ禍とテキサスの大寒波に端を発した昨年からの塗料原材料価格の高騰は、年を越した2022年も衰えることなく塗料メーカーを直撃。「値上げのインパクトは、昨年よりも大きい」(塗料メーカー購買担当者)と、経済活動の再開を顕著にする海外市場や他産業との調達競争を背景に昨年以上に危機感を強めている。
是正策として昨年から価格値上げを打ち出し、大手メーカーを先頭に中小メーカーが続く構図を顕著にするが、分野ごとや時期にバラつきも目立つ。日本ペイントHDの2021年通期業績を見てもグループ全体の営業利益前年比0.0%に対し、日本事業は36.2%減と下振れしており、デフレを加速させてきた国内市場における価格改定の難しさを露呈している。
そうした中、工業用、自動車用、建築用の各事業会社トップが現時点における原材料市況や再値上げの可能性について語った。
2月に4月からの値上げを発表した日本ペイント・インダストリアルコーテイングスの塩谷健社長は、「昨年の7月に価格改定を案内し、8月から実施してきたが、その後原油市況や地域特性のある原材料の状況を鑑みて、今年2月に2回目の価格是正の案内を始めた。当社はBtoBが主体のため、これまでも顧客に事情、状況を説明した上で順次反映させて頂いてきたが、今回についても理解を頂いており、予定通り反映できるものと認識している」と述べた。
日本ペイント・オートモーティブコーティングスの武田川信次社長は、「自動車メーカー、部品メーカーは、高騰を続ける原材料動向に理解頂いている。特に大手顧客に対しては、部品と同様、値決めルールに則って定期交渉しており、今回も4月からの値上げを実施すべく交渉を続けている。しかし、現在想定外の原料高騰を受けており、その辺りの話も含まなければいけなくなっている。非常に厳しい交渉になることが予想されるが、ご理解頂けるよう努めていきたい」と述べた。
建築汎用分野を担う日本ペイントの喜田益夫社長は、「昨年9月に値上げを実施したが、その後もナフサが高騰する中で石油系原料、特にシンナー、添加剤、溶剤系樹脂に影響を及ぼしており、基本的には再値上げの方向で思案している」との見解。また「原材料市況の高騰が下期に続くことも想定する必要がある」と長期化の可能性も示唆し、水性シフトやサプライチェーンを含めた原価低減策など値上げ以外の重要性を示した。
一方、ウクライナ情勢の影響に関しては、「原材料市況については計画の修正が強いられると見ているが、ロシア、ウクライナに事業拠点はなく、直接の影響は少ないと見ている。ただ原材料については利益に影響を及ぼす可能性があるため精査を進めていきたい」との見方を示した。
本来であれば、コロナ収束後の経済活動の再開で原材料高騰を吸収する期待があったが、コロナの長期化及びウクライナ危機による原油価格の高騰で再値上げの気運を高めている。